緑の風と小さな光 第1部
ウォールはグレーのフェルトを取り出した。折り紙の様に折りたたんで鳥の形にした。

別の小さな紙に何か書いて、その鳥に付けた。

換気用の小窓から外に投げた。

牢から出た途端に、まるで本物のツバメの様に空を飛んだ。

魔法使い用の牢の中では魔法は一切発動しないが、外に出してしまえばこの通りだ。

「ガルテンが何か知ってるかもしれん。」

情報屋に連絡を取ろうとしていた。




灰色のツバメは、まる1日飛び続けてガルテンの所に着いた。

ガルテンは、セレに『記憶封じの剣』で記憶を消されたが、今はほぼ元通りだ。

思い出した訳ではない。自分の記録簿を見たのだ。

何事も細々と書き留めておかないと気が済まない性分だった。そのおかげで情報屋の仕事も続けられた。

窓から飛び込んで来た灰色のツバメがガルテンの肩にとまった。

「おや、誰からだ?」

ツバメに付いていたメモを開いた。

「ウォールか…何だ?」

『セレに関する事を知っているだけ全て教えろ』と書いてあった。

「全て、は嫌だね。教えられる事だけ教えて情報料をいただこう。」

フィズの事は、やはり誰にも知らせたくなかった。
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