緑の風と小さな光 第1部
しかし、まだ思うようにに歩けない。

「頼む、連れて行ってくれ。」

エルグにお願いした。

「仕方ないな…」

エルグがおぶってくれた。

ピアリとルルグも、もちろんついて行った。

竜が見られただけでも嬉しかったが、『脱皮』とは、もう感激の域に達していた。



セレ達が着いた時には、ジンの脱皮は半分位まで進んでいた。

ランプの灯りだけなので、良くは見えないが、上半身は今までとは違う色の鱗でおおわれていた。おそらく金色だ。

「すごいな…」

男達はそればかりだったが、ピアリとルーチェは

「痛くない?」

そちらの方が気になった。

「ほんの少し。気になる程じゃないよ。」

とジンが言った。

それなら安心して見ていられる。

ジンはゆっくりと皮を脱いでいく。

「ジン、頑張って。」

ルルグが応援の声をかけた。

順調に脱皮は進んだ。

そして最後、ジンはルーチェに、尻尾の先をそっと引っ張ってくれ、と頼んだ。

スルリと抜けた。

「おおっ!」

「成獣だな。おめでとう!」

「綺麗だわ!」

祝福と賛嘆の言葉にジンは少し照れくさそうだった。

出来立ての鱗は、まだ少し柔らかかった。
< 265 / 287 >

この作品をシェア

pagetop