緑の風と小さな光 第1部
やっと、夜が明けた。

一晩てこんなに長かったっけ?とルルグは思った。

工場の屋根にみんなは早めに集まっていた。

セレが呪文を唱えると、レプリカが動き出した。

「気をつけて乗ってくれ。乗ってしまえば魔法の範囲内だから落ちる事は無いよ。」

ルーチェだけは少し怖がっていたが、ジンが

「大丈夫だよ。」

と手を取って引っ張り上げた。

「行くぞ!」

セレの一声で、ジンのレプリカは空へと高く上がった。

本当に生きて飛んでいるかの様に、風を切って進んだ。

山あいから上り始めた太陽に照らされて、村の景色も、レプリカも金色に輝いた。


「もっと高く飛んで!」

ルルグがせがんだ。

「怖くなっても知らないぞ。」

笑顔でそう言って、セレはレプリカを上昇させた。


「雲と並んでる!」

「僕達の村ってこんなに綺麗なんだね…」

「空って気持ちいい!」


セレは少しだけ遠回りした。


数分間、快適な空の旅を満喫して、目的地の川原に降りた。

少し下流に橋が掛かっていた。ウォールはあの橋を渡るだろう。

「セレ、どこに隠すんだ?」

「あの崖の中腹。ちょうどいい窪みがある。」
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