緑の風と小さな光 第1部
「…セレ、もういいんじゃないか?」

ウォールの様子を見かねてエルグが言った。

「そうだな…。ここまでショックを受けるとは思わなかった。」

「……?」

ウォールには訳がわからない。

セレがネタばらしをした。

「ウォール。今、お前が燃やしたのは偽物だよ。わざと燃えやすく作ってあったんだ。」

「……」

「お前が騙されて悔しがる顔を見たかっただけだ。」

「じゃあ、竜は…」

「本物はお前が睨んでた通りジンだよ。但しもう成獣になったから歯が立たないぞ。諦めるんだな。」

そこに居るジンは人間の姿だったが、もうあどけなさは無くなっていた。

「そうだったのか…」

ウォールは深い溜め息をついた。

辺りにはまだ煙がくすぶっていたが、その中に良い匂いも漂っていた。

「ん?何だか美味しそうな香りがするな?」

エルグが不思議そうに言った。

「あ、そうだった。」

セレがレプリカの灰の中から、何かを取り出した。大きな葉で何重にも包んである。

「熱っ!…いい具合に焼けてる。」

中から出て来たのは蒸し焼きになったジャガイモだった。チーズまで乗せてある。

「セレ…」

そこに居た全員が呆れ顔になった。
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