緑の風と小さな光 第1部
森が安全かどうかはわからないが、泥人形を操っている者の目から逃れられるかもしれない。

かなり大きな森だった。

高い針葉樹が多く、日暮れも迫り、暗かった。普通なら入る気にはならないだろう。

だがセレは一気に駆け込み、奥へと走り続けた。

さっきのローエンの話しからすると、5キロ程先にセレの居た離宮がある筈だ。

邪悪な気配は感じなかったし、もしかしたら自分を受け入れてくれる誰かがまだいるかもしれない。とりあえずそこに行ってみようと思った。

しばらく走って、灌木に囲まれた小さな窪地を見つけた。ピアリをそこに下ろした。

彼女を休ませなければ、とセレは思った。

ピアリは疲れ果てておとなしくなっていた。

「横になって休んだ方がいい。俺が見張っている。」

ピアリの表情は虚ろだった。

言われるがままに横になり、目を閉じて動かなくなった。眠りに落ちたのか、意識を失ったのかわからない。

セレはピアリの精神が崩壊でもするのではないかと心配だった。




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