緑の風と小さな光 第1部
セレは川の水に濡れない様に肘の辺りまで袖をまくり上げていた。

無数の引っかき傷とあざがあった。

「その傷、私…? 私がやったのね?」

「……」

これは無神経だった、とセレは思ったがもう遅い。

ピアリは昨日、力任せにセレを殴っていた。

父親の事は彼のせいではない。わかっている。

セレはローエンの言った通りにしただけだ…

しかし、父親の突然の死を目の前にして普通でいるなんてできる訳が無い。

セレを責める事で、崩れそうな心を何とか保っていた。

…今もそうしたい気がする…

でも、セレも傷ついている…

ピアリの目から涙がこぼれた。

セレも沈痛な面持ちになった。

「俺が…」

「いいの!もう何も言わないで…」

2人とも黙り込んでしまった。

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