緑の風と小さな光 第1部
その上を歩いて行く。

蓮の花の下に小さな魚が見えた。

玄関にはレリーフの施された大きな扉。

王家の紋章[鳶《とび》]も彫られていた。風の象徴だ。

取っ手を引いてみる。ここも軋みながら開いた。

「大丈夫なの?」

何の躊躇も無く入るセレにピアリは声をかけた。

「心配ない。人の気配は2階だ。」

奥に向かって廊下が伸びている。

窓のカーテンが全部閉められている。

暗い。

無限の闇に吸い込まれる様だ。

セレが短い呪文を唱えると、壁の燭台に火が灯った。

「えっ!?」

セレって火の魔法も使えるんだ…

驚いているピアリを振り返る事もせず、相変わらずセレは無表情に歩いて行く。

ピアリは壁に掛けられている絵に目が行った。

最初は風景画。

水辺だ。

強い陽射しに輝く水面や空の青が美しい。多分、夏だ。




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