緑の風と小さな光 第1部
「彼」が、どんな人間なのかピアリは全く知らなかったが、何故か会うのが楽しみだった。

丸太小屋を出て、なだらかな斜面を南に登る。歩いて10分程の距離だ。

胸の高鳴りを感じながら季節風に波打つ草原を見渡した。


「あっ!」

人影が見えた。

「彼」だとピアリは直感した。呼び方は「セレ」と勝手に決めていた。

彼は背を向けて立っていた。

スタンドカラーの上着にズボン姿。これも、この辺では一般的な男性の服装だ。

見た目は特に変わった所は無い。普通の人間だ。

大地の色の髪が微かに風に揺れている。

…お父さんより少し背が高いみたい…

ピアリの足は自然に速くなっていた。

どうやら声の届く距離まで近づいた。


「セレ?あなたはセレシュヤーデでしょ?」



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