緑の風と小さな光 第1部
次は花。

素朴な白っぽい花瓶に色とりどりの可愛らしい花々。優しい色だ。

そして肖像画。

王家の紋章の刺繍が入った深緑のマントを纏って、ゆったりと豪華な椅子に座っている人物。それは…

「セレ?この絵セレでしょう?」

ピアリの問いにセレはちらりと肖像画を見た。

「これは18歳の成人の儀の時だ。こんな立派な服を着たのは、この時だけだ。」

それだけ言って、またスタスタと歩き始めた。

ピアリは少しの間その肖像画を見ていた。

「本当に王子様なんだ…」

セレはさっさと先に行ってしまった。ピアリは慌てて追いかけた。

奥に進むとホールがあった。小さな舞踏会でも開いていたのだろうか。

隅に緩やかに螺旋を描く階段があった。手摺りには繊細な植物の彫刻が施されている。

…やっぱり王家の持ち物ってすごいわ…

いちいち驚嘆しながらピアリはセレについて2階に上がった。

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