緑の風と小さな光 第1部
これを聞いてセレが口を開いた。

「父親の死でピアリの精神がおかしくなってしまったら、どうするつもりだったんだ?」

強い口調では無かったが、怒気が感じられた。

「…怒っているのですね。あなたには心を与えない方がいいとヴァシュロークには言ったのですが。」

「ピアリがどれ程のショックを受けたと思うんだ?」

「もちろん様子はずっと見ていました。水鏡という魔法です。水に映った像を通して空間をつなげるのです。森の樹木についた水滴とこの水を使ったのです。」

洗面器の様な平たい金属製の器に水が張ってあり、水面には森の様子が映っていた。

セレ達の姿は丸見えだったわけだ。

「危ないと感じたらすぐに止めて本当の事を言うつもりでした。」

「私も気が気じゃなかった。身も心も磨り減った気がします。」

ローエンが言った。

「あなた達を追い詰めるのはかなり胸が痛かった。…だがフィズを守るという事は本当に大変な事なんです。」

確かにローエンはこの1日で少し痩せた。相当な心労だったのだろう。

ともあれ、ピアリの父親が生きていてくれて良かった…とセレは心底思った。

殺してしまったと思った時の心の重さは忘れられない…
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