緑の風と小さな光 第1部
だが、その話は嘘とは思えない。

現に彼女の言った通りの場所にフィズの原石があった。

何より、君がフィズを宿してシエナの試練を乗り越えここにいる。

これはごまかしようのない事実だ。

とは言え、知らない間に身体を造り変えられて、とんでもなく重い使命を背負わされて…君にとっては迷惑な話だろう。

しかしフィズが君を選んだのだ。フィズの力を手に入れた、とも言える。

フィズとは、つまりエネルギーを様々な形に変える力を持っている石だ。

大地や海や風、草や木や動物…あらゆる自然の事象からエネルギーを吸収し、形を変えて放出する。

未来の瀕死の世界に生命力を蘇らせる魔法石なんだ。

宿主の君の生命力や魔力も強くなっている。

君が望むなら、どんな真空も、高温や高圧も、その逆も一瞬で作り出す事ができる。

火や水の魔法は苦手だったと思うが、いずれは自由に使える様になるだろう。

…これはとんでもなく恐ろしい事でもある。

人を救う力は、人を滅ぼす力にもなる。

フィズを託す者は慎重に選ばなければならない。

だからこそ君を試した。

フィズとの相性の問題だけではすまない。

…だが、君なら大丈夫だ。」
< 50 / 287 >

この作品をシェア

pagetop