緑の風と小さな光 第1部

シエナ

セレは小鳥のさえずりで目が覚めた。

朝になっていた。

透き通った光を浴びて庭園は宝石を散りばめた様だった。

すぐ隣でピアリはまだ眠っていた。

あどけないその寝顔をしばらく見ていた。

…こんな時間がずっと続けば…

ふと、そんな気持ちが頭をよぎった。


そのうちにピアリも目を覚ました。

「あれ…?私、いつの間にか眠っちゃったんだ…んー?ここは何処?」

セレは不安になった。

…もしかしたら、昨日、シエナに記憶を消された…?俺の事も覚えていないのか…?

ピアリはセレに振り返った。

「ねぇ、セレ、ここって何処だっけ?」

…良かった。記憶は消えていなかった。

何故か自分の事を忘れて欲しくなかった。

「ここは俺が住んでいた離宮だよ。昨日の事、忘れたかい?」

「昨日…」

と、呟いてからハッと我に返った。

「そうだ!お父さん!お父さん生きてたんだ!どこにいるの?」

「近くにいると思うよ。」

「お父さーん!」

セレの言葉が終わらぬ内にピアリは走って行ってしまった。

…頭の中が丸見えな娘だ…

セレは笑顔になっていた。
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