緑の風と小さな光 第1部
「ヴァシュロークに『美味しい』と言ってもらえると本当に嬉しかったわ。」
ヤールが学校に行くようになってからは、教師としての時間よりも料理に携わる時間の方が長かった。
だが、その後ヴァシュロークはセレの教師としてこの離宮にいることが多くなった。
更にフィズを造るためにローエンの小屋にも通うようになり、王宮の方にはほとんど顔を出さなくなってしまった。
そして数年後、王宮にセレの訃報《ふほう》が届いた。
「あの時、ヤール様と一緒に私もここに来たのです。そうしたら、いきなりヴァシュロークに呼び出されて…」
セレとフィズの事を聞かされた。
「驚きました。まさか、そんな事になっているとは。」
ヴァシュロークは、自分がもう長くは無い、という事も明かした。
「全身の細胞がおかしくなっているのさ。」
と彼は言った。
つまり癌《がん》だった。
「どれだけ泣いたかわからないわ。」
シエナはさらりと言った。
「…この話はもう終わりにしましょう。こんな事を話すつもりは無かったのですが…」
ヤールが学校に行くようになってからは、教師としての時間よりも料理に携わる時間の方が長かった。
だが、その後ヴァシュロークはセレの教師としてこの離宮にいることが多くなった。
更にフィズを造るためにローエンの小屋にも通うようになり、王宮の方にはほとんど顔を出さなくなってしまった。
そして数年後、王宮にセレの訃報《ふほう》が届いた。
「あの時、ヤール様と一緒に私もここに来たのです。そうしたら、いきなりヴァシュロークに呼び出されて…」
セレとフィズの事を聞かされた。
「驚きました。まさか、そんな事になっているとは。」
ヴァシュロークは、自分がもう長くは無い、という事も明かした。
「全身の細胞がおかしくなっているのさ。」
と彼は言った。
つまり癌《がん》だった。
「どれだけ泣いたかわからないわ。」
シエナはさらりと言った。
「…この話はもう終わりにしましょう。こんな事を話すつもりは無かったのですが…」