緑の風と小さな光 第1部

再会

動きを止めるのが無理なら次の手だ。

タリヤは予め王宮内に罠を仕掛けていた。

今まで発動させた事は無かった。必要が無かったから。

魔法の『網』を通り抜けた者はいたが、大地の魔法で捕らえられなかった者は初めてだ。

その罠は『王の寝室に入るには絶対に通る場所』にある。寝室のドアと窓だ。

壁を壊して入るなら別だが、まずそれは無い。

「国王陛下には絶対に触れさせない!」

タリヤは罠を発動させる呪文を唱えた。



セレは王宮の壁を登っていた。手掛かりは僅かな凹凸だけだ。

「王宮の壁を登る王子なんて世界中で俺だけだろうな…」

目当ての部屋の下に着くまで、思ったより時間はかからなかった。

寝室の窓に手が届く所まで来た。ここまでは何も無かった。

だが『王の寝室』だ。すんなり入れる訳は無い。見張りが居ないのはその証拠だ。

窓に向かってコインを投げてみた。ガラスにぶつかる瞬間

スカッ!

とコインが真っ二つになった。

…真空だ。
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