緑の風と小さな光 第1部
だが…セレの姿が消えた。

いや、消えた様に見えるほど速かった。

大地の魔法と風の魔法を同時に使えば、とんでもない速度で動ける。

たった今、わかった事だ。

タリヤは同時ではなく交互に『風』と『大地』を使い分けていた。

セレもそうだったし、魔法とはそういうものなのだ。

切り替えの間隔は1秒も要らないが、異種の魔法を同時に発動させる事は出来ない。

その筈なのだが、セレは追い詰められて『同時発動』が出来てしまった。

その結果が『瞬間移動』だった。

タリヤは何が起こったのか解らなかった。

いきなりセレが背後にいて、その剣はタリヤの首筋に当てられている。

「王に話があるだけだ。」

セレが言った。


その時

王の部屋の窓が開いた。

「そこまでだ!話があるなら聞こう!」

ヤールシュレイテ国王が顔を出した。

「タリヤ、御苦労だった。下がって良い。」

「ですが、陛下。」

「大丈夫だ。今の戦いは見ていた。この者は我々に危害を加える気は無さそうだ。」

セレが全く攻撃魔法を使わない事に気が付いていた。

「…はい。」

タリヤはその場を去った。
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