緑の風と小さな光 第1部
並んだら、一目で兄弟だと判ってしまう。

ヤールシュレイテ陛下に兄弟などいる筈は無いのに…

窓の外、すぐ近くに王の身を案じて先程のタリヤがいるのはわかっている。腹心の部下だ。

他にも何処で誰が見ているか分からないのに、ここで正体を暴露するとは不用心もいいところだ。

二人とも笑顔になった。

「兄様はあの時のままですね。」

「死人は年を取らないからね。22才のままさ。今では私の方が年下だ。」

ただ、ヤールは実年齢よりも下に見える。目が大きいせいか、やや童顔なのだ。

威厳を持たせようとヒゲを生やしている。

「お前、ヒゲが似合わないなあ。」

セレがしみじみ言った。

「…言わないで下さい。自分でもそう思うのですが、こうでもしないと『可愛い』と言われてしまうのです。」

セレは声を出して笑ってしまった。

「いいじゃないか。可愛らしい国王がいたって。」

「兄様はいいですよ。年齢よりも老けて見えるから。」

「言葉を選べ。ヤール。」

昔のまま、仲の良い兄弟だ。

気のおけない会話は続いた。二人の笑い声はドアの外のタリヤにも聞こえていた。

…こんなに楽しそうな陛下は久しぶりだ…
< 94 / 287 >

この作品をシェア

pagetop