緑の風と小さな光 第1部
「何事も無いなら別にいいのです。」

「はい。何もありません。大丈夫です。おやすみなさい、母上。」

「おやすみなさいヤール。明日の誕生祝賀会、楽しみにしています。」

セレとヤールの母、レイムは納得した訳では無い。

だが、ヤールが大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろう。

何も訊かずに戻って行った。


入れ替わりにタリヤが部屋に入って来た。

「陛下、先程の人物は…」

「聞いていたのだろう?」

「…はい。」

「私とお前だけの秘密だ。誰にも言うな。」

「はい!」

秘密…国王陛下と自分だけの…タリヤは嬉しかった。

そんなタリヤを分かっているから、敢えて口封じの魔法はかけない。

「兄様に『甘い』と言われそうだ…」

誕生祝賀会が終わったら、久しぶりに兄様の墓に行こう、と思った。

…裁判への立ち会い、議決の承認、役人達からの報告会、恒例の行事への参加…などなど果てし無い国務は待っているが…


「もっと兄様と話したかったな…」


ヤールは窓の外をしばらく見ていた。


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