緑の風と小さな光 第1部

ピアリ

約束の時間に間に合ってセレは農家に戻って来た。

「セレ!」

ピアリはセレの姿を見つけると、大きく手を振った。

セレは左手を挙げて応えた。

「戻って来たかい。良かったな。」

老夫婦も笑顔で迎えてくれた。

でも老婆の方は少し残念そうだ。ピアリともう少し一緒にいたいのだ。

「すみませんでした。無事に用事を済ませました。」

セレは老夫婦に頭を下げた。

「ん?怪我をしているな?!」

「ええ。でも大した事はありません。すぐに治ります。」

と言いながら、自分の右腕を見て驚いた。

腕一本、丸々真っ赤だ。ほとんど血は止まっていたが、これはなかなかの迫力だ。

「セレ!見せて!」

ピアリが飛んできた。

「上着を脱いで!」

強引にセレの上着を剥ぎ取って、ヤールが止血の為に巻いてくれたハンカチをそっと外した。

「…何?この傷…」

何本ものナイフでズタズタに切った様な傷だ。かなり深いものもある。

老夫婦は思わず目を背けた。

ピアリは自分のリュックからガーゼを何枚も取り出した。

「煮沸消毒をするから、お勝手を貸して下さい。」




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