☃桜舞う頃 夢見頃☃


足元は簀の子、靴入れのフタはない
という昔ながらの下駄箱で靴を履き替えながら

「この名前のシール、1年使っただけなのに
ボロボロね」

『花筐渢香』(はながたみ=ふうか)という文字を
指先でなぞって渢香が笑う。

「ウチのは綺麗〜」

几帳面にシールの淵まで綺麗に貼られた
『見沢美弥渼』(みやざわ=みやび)
を指差して胸を張る美弥渼に


「いや、ミヤはすぐ張り替えるから」


『吉野翔』(よしの=かける)の文字が消えかかって
もはや識別できないモノを眺めて翔が言う。


「カケルはボロボロ過ぎ」


べーっと舌を出す美弥渼。


「いや、ミヤは本当に張り替えすぎ」


自分の文字に特に興味を示すそぶりをみせずに
靴を履くのは藕翁裕灼(はすおう=ゆうや)。


「そういうユウヤも張り替えてるの知ってるよ」

『六道はな』(ろくどう=はな)という
自分の名前を愛おしそうにみながら指摘する はな に


「あれ、はなちゃん、見ちゃったの?」


裕灼がにっこりと笑顔を向ける。


「こわいこわいこわいこわい」


なぜだか『羽入和匡』(はにゅう=かずまさ)
のテープを指に貼り付けて
和匡が はな をかばうように間に入る。

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