☃桜舞う頃 夢見頃☃
「俺たちんトコは喜んで飛んできそうだもんな」
裕灼が戯けた風に言って、肩をすくめる。
渢香は少し後ずさって食卓の椅子に座ると
未だ湿った長い黒髪を後ろに払いのけて
「結論から言って、親が来ることはないと思う」
面倒臭そうに言い切った。
「ユウヤのところも同様でしょ?」
「ああ。」
裕灼は裕灼で退屈そうに視線を泳がす。
「えー、どうすんの?」
少しいつもの調子を取り戻した風の美弥渼が
身を乗り出した。
「最悪野宿」
と裕灼が言えば
「地獄の強制送還」
渢香がぶるりと身を震わせる。
「ぇ……そういえば、
二人のお家のこと、全然知らないねウチら」
「そんなこと言ったら美弥渼の方が謎だよ」
「あ、そっかぁ」
なんて冗談めかして言う。
乾いた笑い声。
それが終わると居間はしんと静まり返った。