☃桜舞う頃 夢見頃☃
何故って?
「寮生だけクラス替えがないって不公平」
ほんのり人工的に染められた頬を膨らませ
マニキュアを放り出す少女。
「面倒だからだろ」
放り上げたボールから目を離さず即答する少年。
「ミヤちゃんはクラス替えしたいんだ」
寝ている少年から視線を上げて
微笑む少女。
そりゃあね、と肩をすくめるのを受けて
「俺はかまわないけど?」
離れちゃったら嫌だからね、
と口の端をあげ、髪をひっぱる少年に
「私は是非とも変えていただきたいわね」
きつい視線をなげかけ
自分の髪を取り戻そうと本を置く少女。
「・・・」
なんとなく噛み合わない空気に
思わず沈黙。
「お前ら特別扱いだろ、いいじゃねーか」
沈黙を破ったのは外野で
「花筐、六道、藕翁、見澤、吉野、羽入、ウサギに呼ばれてんぞ」
律儀に全員の苗字を呼んでそう伝言する。
「おーぅ」
やる気のない声をあげながら
だらだらと席を立つ。
「…どーでもいーけど、寝かせてよ」
寝ていた少年の呟きは誰も知らない。