絶対に好きじゃナイ!
5.意地っ張りの恋愛闘争の記録
夢を見た。
昨日の夜は泣き疲れて、ベッドの上で小さく丸くなって少しだけ眠った。
Tシャツから香る微かな社長の香りが、忘れていた記憶を呼び起こしたみたいだった。
「久しぶりだな、梨子。元気だったか?」
あれは、わたしが高校生の頃。
社長が久しぶりに地元に帰って来ていて、学校帰りにたまたま道ですれ違うことがあった。
大学院に進んだ社長が建築士になるために勉強をしていた頃だけど、あの頃のわたしはまだそんなことは知らなかった。
「……こんにちは」
長い間会っていなかった社長。
下手をしたらもう二度と会うこともないんじゃないかと思ってたのに。
もうわたしは小さな小学生じゃなくて、久しぶりの虎鉄にどう接すればいいのかイマイチわからなかった。
もう高校生なんだなとか、制服似合うなとか、会えなかった時間がウソのように自然に話しかける社長。
それに対してわたしはひたすらぎこちなく答えを返すだけだった。