絶対に好きじゃナイ!
「好きなヤツとかできたのか?」
「……ううん」
だって、誰かさんがわたしの男を見る基準をうんと厳しくしていったんだもん。
当の本人は久しぶりに現れて、なんだか満足気に頷いてるんだけどね。
「それに男子って、みんな"お前にだけは手ぇだせない"とか言ってくるんだよ。わたしってそんなに魅力ない?」
「そうかそうか」
「ちょっと仲良くなってもやっぱりムリって言われるの。わたし、変な噂でもながされてるのかな……」
女子の友だちはたくさんできるのに。
その子たちはみんな彼氏がいて、わたしだってそういうことに興味もある。
デートをして手を繋いで、最後にはロマンティックなキスをしてみたい。
そう思うのに、いざ相手を目の前にするとどうしてもその人とそういうことする自分が想像できなかった。
「悪いな、梨子」
ついボヤいたわたしに、なぜだか社長が謝った。
そして柄にもなく照れくさそうな顔をして言ったんだった。
「お前のこと好きで堪らない男もいるから。絶対に迎えに来るから、それまで待ってろよ」
そんな予言めいた言葉を残して、それ以来社長に会うことはなかった。
わたしを迎えに来た、あの日まで。