絶対に好きじゃナイ!



翌朝、少しだけ目が腫れていた。

なんとか冷たいタオルで冷やして、出勤の準備をする。


いっそのこと、会社なんて休みたい。


だけど社長がいるのに、わたしだけ休むなんてそんなこと絶対できないと思った。

あの人は、きっといる。
事務所に行けば完璧な"社長"の顔をしたあの人がいるんだろうから、わたしも普通の顔をして行けばいい。



鉛がついたみたいに重たい足を叱咤して、わたしはみんながいる事務所へと向かっていった。






「おはようございます」


上がらないテンションを無理やり吊り上げてオフィスに入ったとき、目をきらきらさせた紫枝さんがこっちを振り向いた。


「おはよう、梨子ちゃん! 全く心配かけて! 本当によかったわね〜」

「え? な、なんのことですか?」

「soirだよ、soir! 今日資料受け取ってくれるらしいよ!」


朝からハイテンションの松丸くんの言葉にわたしは目を丸くした。
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