絶対に好きじゃナイ!

「え! ほ、ほんとですか?」

「本当、本当! さっき連絡が来たんだってよ!」


けらけら笑いながら松丸くんがわたしの背中をバシバシと叩く。


「い、痛いんですけど……」

「ああ、ごめんごめん。なんか梨子ちゃん、元気ないみたいだからさ」

「うっ……」


意外と鋭い松丸くんの指摘に思わず言葉が詰まる。

もちろん、昨日の電車の遅れのせいで資料を届けられなかったのはショックだった。


だけど元気がないのは別の理由というか、そのことはほとんど忘れかけていたと言うか……


「椎名」

「……! はいっ!」


昨日あれだけ落ち込んだくせにと、自分を反省していたら突然名前を呼ばれた。

珍しく社長室から出てきた社長に手招きされて、彼のところへすっ飛んで行く。


スーツに身を包んだ社長はいつも通りに隙がなくて、鋭い瞳も精悍な顔つきも何一つ崩れていないのが少し悔しかった。
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