絶対に好きじゃナイ!

「社長秘書の斎藤といいます。社長夫人がお待ちですので、ご案内致します」

「しゃ、社長夫人……?」


ついぽかんと口を開けたわたしを見て、斎藤さんが柔らかく微笑んだ。


「夫人はときどき新作の開発などにご意見をくださるのですよ。まあ、手伝いと称して社長室に連れ込まれているとも言えますが」

「へ……?」


にっこりと笑った斎藤さんが、内緒話をするように少し顔を近付けて言った。


「"女性同伴"と言われましたでしょう? うちの社長は、奥様を溺愛しておられるのです」


え、えぇ!?

まさか女性同伴って、男性とふたりきりにはさせたくないとかそういうことなの!?


な、なんて甘ったるい社長さんなの!


心の中でちょっと失礼なことを叫びつつ、思わず頬が熱くなる。

だって、こんな大きなブランドの社長さんでそんなに奥様のことを大事になさってるなんて……

ぜ、絶対イケメンだよー!
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