絶対に好きじゃナイ!

ひとりであたふたとしていると、突然うちの社長に腕を掴まれてぐいっと引っ張られた。

すぐ近くにいた斎藤さんが遠ざかって、少し目を丸くする。


「案内をお願いします」


ピシリと言い放った社長を見て、斎藤さんはなんだか納得したような顔をするとまたすぐに笑顔に戻った。



「これは失礼致しました。とても素敵な女性をお連れになられたものですから、つい」

「ちっ……」


え、今、社長舌打ちした……?
そんなことして大丈夫なの!?


あわあわと社長と斎藤さんを見比べていると、それに気付いた社長がわたしを見下ろして言った。


「心配すんな。こいつはちょっとした知り合いでな。胡散臭いヤツだから気をつけろ」

「相変わらず口の悪い方ですね、西城社長は。椎名様とはどうやら長いお付き合いになりそうですから、どうぞよろしくお願い致します」

「は、はぁ……」


なんだかよくわからないけど、エレベーターに乗るだけでとっても疲れた。

これじゃあ先が思いやられるんだけど、本当に大丈夫なのかな……?
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