絶対に好きじゃナイ!
「下までお見送りします。気を付けて帰ってくださいね」
夫人がそう言ってソファから立ち上がる。
部屋をでると斎藤さんが待機していて、エントラスまでを4人で戻った。
廊下を歩きながら、わたしはうずうずしちゃってこっそり斎藤さんに話しかけた。
「夫人ってとっても素敵な人ですね、社長さんが溺愛なさるのもわかります。お会いできて本当によかった」
「ええ。わたくしもあなたにお会いできてよかったと思いますよ」
「へ?」
うっ……、なんだろう?
斎藤さんの笑顔がちょっとだけ意地悪そうなものになった。
「実は、西城社長とは大学時代のちょっとした知り合いでしてね。勉強もできて女性にも人気でどうやら腕っぷしも強いらしい……」
少し離れて前を歩く社長にちらりと視線を投げかけて、更に声を落として言った。
「そんな彼にも意外な弱点があると専らの噂でしてね。どんなに強い男も、好きな女性には弱いものですね」
「? は、はぁ……」
そっか、斎藤さんと社長は大学の知り合いなんだ。
斎藤さんが言いたいことはいまいちわからなかったけど、適当に頷いておいた。