絶対に好きじゃナイ!
「もしかして、彼とあなたは恋人同士なんですか?」
え、えぇ?
彼って社長のこと!?
そんなきらきらした瞳で一体何をおっしゃるのかと思ったら!
「ち、違います!」
「あら、そうなの?」
何故か夫人が残念そうな顔をする。
「彼、あなたのことをとても大事にしているように見えますけど」
「い、いえ。その、ちょっと地元の知り合いなもので……」
ふーんって、なんだかつまらなそうな顔をした夫人。
「それをおっしゃるなら夫人こそ、旦那さまに大事にされてて羨ましいです」
ちょっと過保護な気もするけど、そんなふうに愛してくれる旦那さんなんてとっても素敵だと思う。
そう言うと夫人は可愛らしくはにかんで笑った。
「夫人だなんて、やめてください。椎名さんとわたし、結構年も近いと思うの」
それから夫人はなにか特別なものを見るような優しい視線をわたしに向けて、その視線をわたしの足元へ滑らせた。
「……その靴、ちょっと数年前のものだけどうちのヒールですよね?」
わたしは自分の履いていた黒いsoirのヒールを見下ろして、その言葉にこくこくと頷いた。