絶対に好きじゃナイ!
だけど、意地っ張りなんかに邪魔されてる間に、社長がどこかへ行っちゃうことがいちばん怖いからーー
「梨子?」
社長がわたしの腕を掴んで離すとくるりと振り返る。
それでもしがみつくわたしを、片腕でそっと抱きしめてくれた。
だけど、もう片方の手はまだ電話を繋げたままで……
「俺が好きな、他の女って誰のことだ?」
「え?」
ヤダ、ここまで言わせておいて誤魔化すつもりなの?
その電話の相手に向かって好きだって言うところ、ちゃんと聞いたんだからね!
わたしがちょっと口を尖らせて社長のもつ携帯をちらりと見ると、それに気付いた社長が携帯をわたしの耳に当てる。
すると、まだ通話中の電話から相手の声が聞こえてきた。
『んもーぅ、梨子ちゃんったら! 聞こえちゃったわよーう』
「……え?」
な、なんだかこの声って……
なんか変なしゃべり方してるけど。
でもでも、この声ってまさか……!