絶対に好きじゃナイ!

だけど、意地っ張りなんかに邪魔されてる間に、社長がどこかへ行っちゃうことがいちばん怖いからーー



「梨子?」


社長がわたしの腕を掴んで離すとくるりと振り返る。
それでもしがみつくわたしを、片腕でそっと抱きしめてくれた。

だけど、もう片方の手はまだ電話を繋げたままで……



「俺が好きな、他の女って誰のことだ?」

「え?」


ヤダ、ここまで言わせておいて誤魔化すつもりなの?

その電話の相手に向かって好きだって言うところ、ちゃんと聞いたんだからね!


わたしがちょっと口を尖らせて社長のもつ携帯をちらりと見ると、それに気付いた社長が携帯をわたしの耳に当てる。

すると、まだ通話中の電話から相手の声が聞こえてきた。



『んもーぅ、梨子ちゃんったら! 聞こえちゃったわよーう』


「……え?」


な、なんだかこの声って……

なんか変なしゃべり方してるけど。
でもでも、この声ってまさか……!
< 126 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop