絶対に好きじゃナイ!
なんだ、こんなに簡単なことだったんだ。
少し勇気を出してその背中に飛びついただけで、こんなにもあっさり社長の腕に抱きしめられることができた。
腕の中に囲われながら、わたしは少しずつ湧いてくる幸せな実感にうっとりと浸っていた。
彼女だ。
わたし、今日から社長の彼女になるんだ。
わたしだけを映す社長の瞳。
あたたかい胸に包まれて、もう離さないというようにぎゅっと抱きしめられる。
そうされるだけで、昨日まで感じていたいろいろな不安がしゅるしゅると音を立てて縮んでいった。
これからまた何度不安に苛まれることがあっても、この腕の届く範囲にいればきっと大丈夫だと思える。
社長となら大丈夫だって、根拠のない自信がどんどん湧いて来て、そしてわたしはその気持ちをたった今からいつまでだって信じていられると思うの。
ふたりきりの夜のオフィスで、社長に抱きしめられながらうっとりと目を閉じたとき。
デスクの上に置かれた携帯から、ほとんど忘れていた要さんの声がした。