絶対に好きじゃナイ!


「意地っ張りな口だな」


そう言った社長の指先が、わたしの唇を柔らかくなぞる。

ぞくぞくと泡が立ってめまいがする。



「いつか絶対、好きだって言わせてやる」




甘い甘い、宣戦布告。

社長の端正な顔がどんどん近づいてきて、わたしは自然に目を閉じた。


あーあ、なんかもう。

目を閉じるタイミングも、息継ぎの仕方も、すっかり覚えさせられた。


この人のキスを受けた瞬間から、わたしの負けなんてわかってたのかもしれない。




唇が触れる瞬間、社長が小さく囁いた。

唇の上で震える甘い囁きは、わたしに魔法をかけるみたいにゆっくりと注ぎ込まれる。



「恋愛に"絶対"は、絶対ないだろ?」




深くなるキスと一緒に、その言葉がわたしの心に染み込んでいく。



そしてわたしは、意地っ張りなんて関係なくなるくらいに。

この人に夢中になってる自分を、遠くに見たような気がしたのーー
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