絶対に好きじゃナイ!
最初は、はじめてのわたしを気遣って優しくしようとしてくれてるんだと思ったの。
だけどこの意地っ張りなわたしが何度降参を告げても、「まだ足りない」とか「もっと見せろ」とか、全然許してくれる気配がない。
それでわたしは思ったの。
この人は、なにも知らないわたしをからかって意地悪してるだけだって!
「ほら、唇噛むなよ」
「だって……」
「声、出るなら我慢するな」
ムリムリムリ!
だって気を抜いたらすごく変な声がでちゃうの!
「ずっと聞きたかった。梨子の声」
そう言って耳元で甘く囁く社長は、オフィスとはまるで別人。
ついでに、わたしの記憶にある虎鉄もこんな声は出さないしこんなに甘ったるくはないの。
「やっ……、ダメ、そんなとこ……!」
な、なな、なんてことするのーーー!
さっきから社長の行動にパニック連発のわたしを、意地悪く見つめて笑うばかりのこの人。