絶対に好きじゃナイ!

「ふーん、そっか。まだそういう段階なのか。ぐずぐずしてんな、虎鉄も」

「まだって言うか、規模は小さくても相手は会社の社長ですよ? 普通のことだと思いますけど……」

「ああ、いいのいいの。こっちの話だから気にしないで」


へらへらと笑う要さんに、少しムッとなったのがわかる。


こういう言い方が、嫌いだった。
というか、寂しかったの。

わたしも仲間に入れて欲しかったのに、高校生になった社長も要さんも、仲間と一緒にどこかへ行ってしまうことが多かったから。

いつも傷だらけで帰って来たけど、その顔はどんなときも楽しそうだった。


「虎鉄! 今度は西校の人とタンマするんでしょ? 梨子も連れてって!」

「あ? "タンマ"じゃなくて"タイマン"な。誰が言ってた?」

「坊主の怖い人! 虎鉄の友だち!」


まだ幼い頃、「あの野郎今度会ったらシバいてやる」と言った社長の声が聞こえるみたい。

怒ったときの鋭い目つきは今でも全然変わってない。


「梨子ちゃん、梨子ちゃんはまだ小学生だから一緒には行けないよ」

不良のくせに制服の学ランを校則通りに着た要さんが言っていた。

「なんで? 梨子も行きたいのに……」


そう言ったわたしの前にしゃがんで目線を合わせると、少し乱暴に頭をなでてあの頃の社長が言った。
< 14 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop