絶対に好きじゃナイ!
「ふーん、そっか。まだそういう段階なのか。ぐずぐずしてんな、虎鉄も」
「まだって言うか、規模は小さくても相手は会社の社長ですよ? 普通のことだと思いますけど……」
「ああ、いいのいいの。こっちの話だから気にしないで」
へらへらと笑う要さんに、少しムッとなったのがわかる。
こういう言い方が、嫌いだった。
というか、寂しかったの。
わたしも仲間に入れて欲しかったのに、高校生になった社長も要さんも、仲間と一緒にどこかへ行ってしまうことが多かったから。
いつも傷だらけで帰って来たけど、その顔はどんなときも楽しそうだった。
「虎鉄! 今度は西校の人とタンマするんでしょ? 梨子も連れてって!」
「あ? "タンマ"じゃなくて"タイマン"な。誰が言ってた?」
「坊主の怖い人! 虎鉄の友だち!」
まだ幼い頃、「あの野郎今度会ったらシバいてやる」と言った社長の声が聞こえるみたい。
怒ったときの鋭い目つきは今でも全然変わってない。
「梨子ちゃん、梨子ちゃんはまだ小学生だから一緒には行けないよ」
不良のくせに制服の学ランを校則通りに着た要さんが言っていた。
「なんで? 梨子も行きたいのに……」
そう言ったわたしの前にしゃがんで目線を合わせると、少し乱暴に頭をなでてあの頃の社長が言った。