絶対に好きじゃナイ!

気が付くといつの間にか要さんとの電話は終わっていたみたいで、放り出された携帯がテーブルの上に転がっていた。

社長の両手がわたしの手首を柔らかくソファに縫い付ける。


耳たぶにかぷりと噛み付いたり、こめかみに優しくキスをおとしたり。

社長はわたしをどろどろに溶かすことに全く余念が無い。


「もっ……、しゃ、ちょ……!」

「誰が社長だ」


うっかりふたりきりのときまで社長と呼んでしまうと、社長はいつも拗ねる。

自分がオンとオフの切り替えが上手いからってそんなに敏感にならないで欲しいんだけど。


もぞもぞとわたしの身体とソファの間に滑り込んできたふしだらな指先。


わたしはその手をなんとか振り切って仰向けになると、キッと社長を睨み上げた。


「虎鉄」

「ん?」

「要さんに聞いたんですけど。わたしに彼氏ができないように裏で手を回してたって」


わたしがそう言うと少し目を丸くしてから、バツの悪そうな顔をした。

余計なこと言いやがってとか、ぶつぶつと要さんに悪態をついている。
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