絶対に好きじゃナイ!

「手を回したってほどじゃない。梨子のことは俺が迎えに来るつもりだからあんまり手は出さないで欲しいって、何かの折にぽろっと言っただけだ」

「それを手を回したって言うんです!」


そりゃ、普通の人が言ったくらいじゃなんの効力もないかもしれないけど。

あの地元であの"西城虎鉄"がそんなことぽろっとだろうが口にすれば、それでもわたしを彼女にしようとする男の子なんていなくなるに決まってる!


「もう! 自分はいろんな女の子と仲良くやってたくせに!」

「人聞きの悪いこと言うな。俺だってちゃんと彼女をもったのはお前がはじめてだ」

「"ちゃんと"って何ですか! ちゃんとじゃない彼女がいたわけ!?」

「いや、だからそれは……」


だいたい、これだけ女性の扱いが上手いくせに30歳目前にして"はじめての彼女"なんて図々しいんだから!


「……悪かったよ」


頬を膨らませてそっぽを向いたわたしに、社長が心底弱ったような声を出す。


わたしだって、社長の昔の女性関係についてとやかく言うのはあんまり良くないってわかってる。

大人気ないし。
今では、わたしだけをこんなに大事にしてくれてるんだし。
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