絶対に好きじゃナイ!

こっそり友だちに手を振りかえして、熱気のこもるお店を出た。

もう冬も只中。

外は夜でなくても寒いけど、今夜は特別冷え込んでいた。



「さむいー」


腕をさすりながら歩き出したとき、ふと後ろから誰かが追いかけて来るような足音がした。


「ねえ、きみ!」


振り返ると、合コンの席にいた男の人。

みんなの中心にいた人で、よくしゃべる気さくそうな人だったけど……
名前は忘れちゃった。


何か忘れ物でもしたかと思って立ち止まる。
わたしに追いついた彼が、にっこりと人懐こい笑みを浮かべて言った。


「梨子ちゃん、だよね? 送るよ。女の子ひとりじゃ危ないし」

「え、えぇ? いいですよ、大丈夫です。皆さん二次会も行くんですよね?」

「いや、俺はいいんだ。梨子ちゃん送ってくって抜けて来た」


わたしを見てにこにこと笑う男の人。

わたしは何度も断ったんだけど、遠慮してると思ったのかそれでも隣について歩いてくる。
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