絶対に好きじゃナイ!
うーん、まずいかも……
悪い人じゃないと思うんだけど、このまま家まで着いて来られるのはちょっと避けたいのに。
ここでいいって言っても、部屋に入るまで確認するって聞かない。
この人にこにこ笑顔だけど、意外と押しが強いタイプなんだなあ……
仕方ないから、わたしは一旦立ち止まってその男の人を見上げた。
「あの、わたし、今日は彼氏の家に帰るので。ほんとにここで大丈夫ですから」
「え、梨子ちゃん彼氏いるの?」
そう言って途端に笑顔を消して驚いた顔をすると、急に真面目な表情になった。
眉間に皺を寄せて、じっとわたしを見つめている。
「その彼氏、梨子ちゃんのこと大事にしてくれてないの?」
「え?」
「俺なら、梨子ちゃんみたいな可愛い彼女、合コンに行かせたりしないのに」
そう言うとぐっと踏み出して、一歩わたしに近づいて来た。
な、なんかヤバい……?
この人ちょっと怖いかもしれない。
どうしよう、ただの言い訳のつもりだったけど本当にこのまま社長の部屋に行こうかな……
あ、でも社長、今日は遅くまで残業なんだった。