絶対に好きじゃナイ!
「梨子ちゃん、もう抜けない?」
最初のお店を出て、2次会のカラオケに移動する途中で要さんが言った。
もうだいぶ夜は寒くて、そろそろ羽織るものがいるなあなんて思っていた。
「え? 今からですか?」
「だって、もうほとんどペアも決まっちゃったし。もともと俺、ただの人数合わせだし」
うーん、そう言えば要さん、普通の高校教師のはずなのになんでお医者さんの知り合いがいるんだろう。
しかも、突然合コンの人数合わせで呼ばれるくらいの知り合い。
不思議だけど、聞くのはちょっと怖い。
「そうですねえ。あーあ、今日も収穫ナシかあ……」
話しかけてくれる男の人は何人かいたのになあ。
人数合わせだったからやる気ないのかなんなのか、要さんがずっとわたしの側にいるから全然ダメだった。
面倒なのはいいけど、邪魔しないでいてくれればいいのに。
「家まで送るよ。一人暮らしでしょ?」
そう言って誰かに電話をかけ始める。
カラオケとは反対の方向に歩き始めてるから、抜けるのは決定事項らしい。