絶対に好きじゃナイ!
え、なに?
そんなに痛かった……?
「梨子から離れろ」
あんまり怒らせて反撃とかされたらどうしようと思って。
わたしが恐る恐る顔を上げたのと、低く尖った声が聞こえたのとは同時だった。
「しゃ、社長……」
お部屋か会社かどっちにいるのかと思ってたら、どうやらちょうど帰宅途中だったらしい。
男の腕を捻り上げた社長はひどく冷たい目をしている。
細められた鋭い瞳は、誰よりも強い"西城虎鉄"の視線そのもの。
じたばたと喚きながら暴れる男を軽くねじ伏せたまま、わたしに視線を向けるとゆっくりと手を伸ばした。
「来いよ、梨子」
わたしはその言葉で、弾かれたように社長の腕に飛びつく。
社長はわたしをしっかりとその腕の届く範囲に収めてから、やっと暴れる男を解放した。
男のほうはすっかり涙目で、社長のオーラにあてられてもうすでに逃げ出しそうな雰囲気だ。