絶対に好きじゃナイ!
社長はしっかりとわたしの肩を抱いて、なるべくその男から遠ざけるようにする。
そして冷たい視線で黙って男を見据えて、今にも逃げ出しそうなその人をその場に凍りつかせてしまった。
「こいつは俺の女だ。梨子に触ったことは全て忘れろ。できないなら俺が手伝ってやる」
要件だけ告げるように淡々と言った社長に、男は首がとれちゃうんじゃないかと思うくらい激しく頷いた。
それでも社長の鋭い視線に縫い付けられて、背を向けることも許されない。
社長はわたしの腕をしっかりと掴むと、震える男を残して歩き出した。
社長の部屋に向かってるらしい。
「あ、あの……、ごめんなさい。あの人、何回断ってもついて来ちゃって、社長の家に行ったほうがいいかと思って……」
ああ、違う。
合コンに行ったことから説明しなきゃいけないんだった。
そう思うのに、無言でわたしの手を引く社長に言葉がでない。
表情が見えなくて、今もあの鋭く尖った瞳をしていたらどうしようって思ったら喉がきゅっと締まる。
「虎鉄……」
こっちを見て欲しくて。
社長の優しい薄茶色の瞳が見たくて名前を呼んだのに、社長はただ強くわたしの腕を掴んでまっすぐに歩いていくだけだった。