絶対に好きじゃナイ!


社長はわたしを自分の部屋に押し込むと、そのまま寝室に引っ張って行って勢いよくベッドに押し倒した。

覆いかぶさってキスをする。

尖った雰囲気とは反対に、すごくすごく優しいキスだった。


そのことに安心して、社長に触れたくなって、そっと手を伸ばしたとき。


「触るな」


社長がわたしの手首をぎゅっと掴んで、そう言い放った。


いま、何て……?


あまりにはっきりした拒絶に頭が真っ白になって、反射的に身体中から血の気が引く。
びっくりして目を見開いたわたしを、言葉とは裏腹に社長がうんと優しく抱きしめた。


「こ、虎鉄……、わたし、ほんとに……」

「理由はどうでもいい」


きっぱりとそう告げて、薄茶色の瞳にまっすぐわたしを映して言った。


「もう二度と、俺以外の男にあんなふうに触らせるな」


そしてわたしの両方の手首を片手でひとまとめにして、頭の上に柔らかく押さえつけてしまった。
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