絶対に好きじゃナイ!
period4:虎VS猫
ここに入社してから、2度目の春がやって来た。
「松丸くん、ごはん行きましょう」
「え、えぇ? いいけどさあ……」
お昼休みになった瞬間、わたしは情けない声を出す同期の松丸くんを引っ張って立ち上がった。
背中にひしひしと視線を感じながら、ずんずん歩いて素早くオフィスをあとにする。
事務の先輩である紫枝さんの、心配するような視線とか。
設計部長の結木さんの、ちょっとおもしろがるような視線とか。
それからわたしの恋人でもある我が社の社長の、隠す気ゼロのこちらを伺うあの視線とか!
「梨子ちゃん、そろそろ勘弁してよ。俺マジで呪い殺されるって」
わたしの後ろをついて歩く松丸くんがぷるぷると小さく震えながら言った。
「何言ってるんですか。社長は呪いなんてつかえませんよ」
「いや、そうじゃなくてさあ……」
松丸くんはぶつぶつ言いながらもちゃんとわたしについて来てくれて、ふたりでエレベーターに乗りこんだ。