絶対に好きじゃナイ!

いつもはコンビニで買ったものをささっと食べちゃうことが多いんだけど。
今日は絶対、休み時間中はあのオフィスには戻らないんだから。

ぷりぷりと肩を怒らせるわたしに、松丸くんが遠慮がちに話しかける。


「梨子ちゃんに慕ってもらえるのは嬉しいよ。めちゃくちゃ嬉しいけどさ、見ただろ? あの社長の目つき……」


そう言いながら、大きくぶるりと震えた松丸くん。
どうやら朝からどんどん鋭くなっていく社長の突き刺すような視線を思い出したらしい。


「なんで喧嘩なんかしてるの? 昨日あの人の誕生日だったんでしょ? サプライズするんだって、楽しみにしてたじゃん」



そうなの。

実は昨日は、社長の30歳のお誕生日だったんだ。
普段からあんまり外出するほうでもないし、社長の誕生日にはふたりでゆっくりお部屋でお祝いをするはずだった。


社長はそんなことしなくていいって言ったけど、わたしだってはじめてできた彼氏のはじめて迎える誕生日だし。

なにより、社長の誕生日をお祝いするのは本当に久しぶりだったから。
小学生のわたしにはできないやり方で、あの人の誕生日をお祝いしたかったの。
< 166 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop