絶対に好きじゃナイ!
黙り込んだわたしを不思議に思ったのか、社長がこっちを見てギョッとした顔をする。
わたしが堪えきれなくて、小さな女の子みたいにぽろぽろと涙をこぼしていたから。
「いや、梨子……、だから、俺が言いたいのは……」
「もういいです。わかりました」
わたしは自分の鞄をつかんで立ち上がると、社長をキッと睨みつけて言ったの。
「わたしなんかが"社長さま"の言いつけを破って生意気なことしちゃって、本当にすみませんでしたね!」
にっこりと笑って渡すつもりだった、社長への誕生日プレゼント。
それを社長に向かってボスっと投げつけて部屋を飛び出したってわけ。
社長が追いかけてくることも考えて、いつもと違う道を全力で走りながら自分のアパートまで帰ったもん。
「それで朝から社長への当てつけみたいに俺と仲良くしてくれてるわけね……」
「やだ、そんなこと言わないでくださいよ。松丸くんとはいつも仲良しじゃないですか」
「どうだかなあ。社長と付き合いはじめてからは特に、俺には全然かまってくれなかったけど」
そうだったっけ?と首を傾げるわたしを、松丸くんがじとりと睨む。
まあ、迫力は全然ないんだけど。