絶対に好きじゃナイ!

「要さん、家こっちです」


電話中の要さんの肘をつかんで、家の方向に向かって歩き出す。

携帯で友だちに連絡を入れた。
抜けるけど、要さんに送ってもらうだけだから心配しないでって。


ふたりで並んで、あの頃の懐かしい話をいくつかした。

いつもオフィスで仕事をする社長が、どんどんあの頃の社長に戻っていく。
高校生の虎鉄が、少しだけその影を濃いものにさせた。



「あ、梨子ちゃん。ちょっとそこの公園寄って行こう」

「え、えぇ? 公園ですか?」


なんだかなあ。
よくわかんないや、要さんって。

デートでもないのに公園なんて寄ってどうするんだろう。

いや、まあデートなんてしたことないんだけどね。
そういう考えがダメなのかなあ……


ちょっとした小高い丘にあるこの公園は、奥まで進めば灯りのともる街を見下ろせる。
ここら辺の学生のデートスポットだったりして、結構雰囲気のある素敵な公園だ。


わたしだって、ちゃんと彼氏ができたらこういう場所に来てみたいのに。

手をつないで、寄り添って、それから……
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