絶対に好きじゃナイ!

あの社長が、眉をハの字にしてわたしに向かって"すみませんでした"なんて。

レアすぎてついじっと見ちゃった。

すると社長は、小さな男の子がいたずらを見つかったときみたいに、ちょっと口をすぼめて言った。


「誕生日祝ってもらえるのは嬉しかったけど、なんていうか、お前に30歳って言われるのは……」

「え? もしかして社長、年齢を気にしてたんですか?」

「いや、年をとるのが嫌なわけじゃねえけど」


んー?何が言いたいの?

わたしが首を傾げると、いつになく歯切れの悪い社長がわたしから視線を逸らして言った。


「……ずっと、お前がハタチ超えるの待ってたんだ。やっと追いついてきたと思ったら今度はまた俺が年とって、年齢の差なんていつまで待っても縮まらねえんだって……」


社長は自分の言ったことになんだか不機嫌なお顔になって、わたしの背中をそっとドアに押しつけた。

そして片手で柔らかくわたしの目を塞ぐ。

ドアに押しつけられて、腕の中に閉じ込められて。
その上視界を塞がれて真っ暗になっても、少しも怖いと思わない。

そんな相手、社長しかいないのに。
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