絶対に好きじゃナイ!




「梨子ちゃん、ほんとにごめんね」

「もう! 大丈夫ですって。松丸くんのせいじゃないですし」


○月△日、あのふたりは小一時間ほどこんなやり取りを続けていたと思うわ。


なんでも、松丸くんが棚に戻した資料を取りに行った梨子ちゃんが脚立から落ちちゃったんだって。
社長がなんとか受け止めて、ケガはなかったみたいだけど。

本棚の高いところに戻したのは自分なのに気付けなくてごめん、ってことらしい。


わたしはそんなふたりを見て苦笑した。


だって、梨子ちゃんも松丸くんも微笑ましくて可愛いんだけど。
そろそろ社長の様子に気付いたほうがいいと思うの。


さっきから黙々と仕事をこなしてるけど、こっちが気になって仕方ないみたい。
ときどきちらりと視線を寄越して、梨子ちゃんと仲良しな松丸くんを威嚇してる。

まあ、本人は呑気な顔して全然気付いてないのが残念だけどね。



だけどこんな光景はここでは日常茶飯事。

わたしもはじめは信じられなかったけど、最近ではだいぶ慣れて楽しむ余裕すらでてきた。


西城社長の"意外な弱点"は、8歳も年下の可愛い女の子だってこと。
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