絶対に好きじゃナイ!
「え? あ、あの……、えっと、す、すろー……、ぷりーず、すろー」
梨子ちゃんがあんまりオロオロするから、ついわたしもぽかーんと口を開けて固まっちゃったの。
相手が英語をしゃべってるんだってわかって、ハッとして電話を代わろうと思ったとき。
彼女の後ろにサッと影が現れて、梨子ちゃんの右手ごと受話器を奪っていった。
驚いた梨子ちゃんがそのまま顔を横に向けて、そしてボンッと音が聞こえるんじゃないかと思うくらい勢いよく頬を染めた。
「Hello. Sorry for keep you wating. May I have your name, please?」
するすらと英語で受け答えする社長。
社長は後ろから梨子ちゃんに覆いかぶさるようにして、デスクに片手をついている。
社長の腕の中に囲われた梨子ちゃんが、真っ赤な顔をしたまま至近距離の社長のお顔からベリッと視線を引き剥がした。
あわあわと身体を小さくする梨子ちゃんは、冷静な社長とは正反対でもう完全に目が泳いでる。
そして電話を終えた社長が受話器を置くのを見ると、頬を赤くしたままの梨子ちゃんがそっと社長を見上げて言った。