絶対に好きじゃナイ!
「あ、あの、やっぱりすごいですね、社長って。ありがとうございました」
「……ああ」
顔の赤い梨子ちゃんに見上げられてそんなこと言われても、お仕事中の社長は動揺の欠片も見せなかった。
だけどわたしは、見ちゃったの。
いかにも仕事を思い出したみたいに珍しく社長室に向かった社長が、そのドアを閉める寸前。
ほんのりと赤く見える目の縁を隠すように、大きな手のひらでその顔を覆い隠したところを。
なんだかもう、堪えきれなくてくすくす笑っちゃったわ。
だってあの社長が、はじめて恋をしてる男の子みたいだったんだもの。
8歳も年下の女の子に振り回されて、照れたりヤキモキしたり忙しいったら。
わたし、この会社が大好きよ。
小さな事務所で毎日繰り広げられるふたりの恋愛闘争、見てて全然飽きないんだから。
今では恋人同士になったふたりだけど、西城社長の可愛い弱点は健在。
振り回される社長を密かに観察するのが、最近のわたしの密かな楽しみだったりするのよーー